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    フローレス島のコモドドラゴンはなぜ生息数がわからないのか?

    コモドドラゴンの生息数について調べると、コモド島やリンチャ島を含むコモド国立公園では比較的具体的な数字が出てくる一方、フローレス島については「何頭生息しているのか」という数字がほとんど示されません。フローレス島はコモドドラゴンが現在も自然状態で暮らしている地域のひとつであり、島の面積は約13,540km²にも及びます。それだけ大きな島でありながら、コモドドラゴンが島全体に均等に生息しているわけではなく、西部や北部を中心とする限られた地域に分散しているため、島全体の個体数をひとつの数字として算出することが難しいのです。

    一方、コモド国立公園では長期間にわたる捕獲調査によって個体識別が行われ、2003年から2012年までに925頭が標識されています。そのデータを捕獲再捕獲法によって計算した研究では、国立公園内の生息数は2,448頭、推定範囲は2,067~2,922頭とされています。ここで注意したいのは、2,448頭を1頭ずつ数えたわけではないということです。野生動物の個体数調査では、確認した個体の数から全体を推定する方法が一般的であり、コモド国立公園でさえ「正確に何頭」と断定しているわけではありません。フローレス島では、その推定を行うための条件がさらに複雑になっています。


    目次

    生息密度が低い

    フローレス島のコモドドラゴンを数えることが難しい最大の理由は、生息密度の低さです。調査地域によって差がありますが、フローレス島では1km²あたり1頭未満という低密度の個体群が確認されています。これに対して、コモド国立公園では約10頭/km²に達する地域があります。過去の調査でも、フローレス島で確認された平均的な生息密度はコモド国立公園より60%以上低いことが報告されています。つまり、同じ面積を調査しても、フローレス島ではコモドドラゴンそのものに遭遇する機会が大幅に少なくなるわけです。

    コモド島やリンチャ島では、国立公園内の決まった地域を継続して調査することで、個体群の変化を追うことができます。ところが、フローレス島では調査地点にカメラを設置しても、そこにコモドドラゴンが暮らしているにもかかわらず、長期間まったく撮影されないことがあります。これは「いない」のではなく、「確認できなかった」という場合があるためです。野生動物調査ではこの違いが非常に大きく、姿が写らなかったからといって、その地域に生息していないとは判断できません。


    広い島に点在している

    フローレス島の面積は約13,540km²あり、コモドドラゴンが暮らす島としては圧倒的に大きな陸地です。しかし、現在の生息域はフローレス島全体ではなく、おもに西部から北部の沿岸地域に残る複数の地域に分かれています。島の森林やサバンナがすべて連続した生息地になっているわけではなく、人の集落、農地、道路などを挟みながら、それぞれの個体群が離れた場所で暮らしています。近年の研究でも、フローレス島のコモドドラゴンの生息地は細かく分かれており、個体群同士の距離や生息地の連続性が重要な調査対象になっています。

    2010年代から行われた大規模な調査では、フローレス島沿岸部の346地点にカメラを設置し、5年間にわたってコモドドラゴンの分布が調べられました。そのうちコモドドラゴンが確認されたのは85地点でした。この数字からも、フローレス島では「島を歩けばどこかでコモドドラゴンが見つかる」という生息状況ではないことがわかります。広大な島のなかに生息域が飛び地のように存在しているため、未調査地域を含めて島全体の個体数を推定するには非常に大規模な調査が必要になります。


    カメラでも簡単には写らない

    現在、フローレス島のコモドドラゴン調査ではカメラトラップが重要な役割を担っています。人が常時観察するのではなく、森林やサバンナなどに自動撮影カメラを設置し、前を通過したコモドドラゴンを記録する方法です。しかし、カメラを置けばすぐに個体数がわかるわけではありません。西フローレスのワエ・ウウル自然保護区で行われた研究では、餌を使わないカメラを6日間設置した場合、1回の調査でコモドドラゴンを検出する確率は約1%でした。30日間設置した場合でも約3%で、そこにコモドドラゴンが存在していても撮影されない可能性が高いことがわかっています。

    そこで現在は、金属製の容器などに餌を設置し、匂いによってコモドドラゴンをカメラの前に誘導する方法も採用されています。同じ研究では、餌を設置したカメラの検出確率は約15%まで上昇しました。餌なしの6日間調査と比べると約15倍です。それでも、すべての個体が必ずカメラの前を通るわけではありません。研究では、コモドドラゴンが存在しないと95%の確率で判断するために必要な調査期間も計算されており、餌なしでは184日必要だったのに対し、餌を使うことで21日まで短縮できるとされています。この数字を見ると、フローレス島でコモドドラゴンを確認すること自体がどれほど簡単ではないかがわかります。


    数えるより分布を調べる

    こうした事情から、フローレス島では「全部で何頭いるのか」を数えることだけではなく、「どの地域に現在も生息しているのか」を把握する調査が重視されています。カメラトラップでは、ある地点で撮影された回数だけを見るのではなく、調査地点のうち何地点でコモドドラゴンが確認されたかという占有率も調べます。同じ個体が何度もカメラの前を通る可能性があるため、写真の枚数をそのまま生息数にすることはできないからです。

    フローレス島のワエ・ウウルでは、26か所のカメラを使った継続的な調査も行われています。こうした調査によって、その地域でコモドドラゴンが利用している場所の割合や、年ごとの変化を追うことが可能になりました。北部のロンゴス島などでも同様の調査が行われています。フローレス島では島全体の総数を一度に求めるより、それぞれの生息地域で個体群の状態を継続して確認し、その変化を見る方法が適しているのです。

    また、フローレス島のコモドドラゴンはひとつの均一な集団とも限りません。遺伝子研究では、コモド島の個体群とフローレス島北部の個体群が、それぞれ異なる保全単位として認識できるほどの遺伝的な違いを持つことも明らかになっています。そのため「フローレス島に何頭いるか」というひとつの数字だけでは、この島のコモドドラゴンの状態を十分に表せないともいえるでしょう。どこに、どの程度の個体群が残っているのかを地域ごとに把握することのほうが、現在の生息状況を知るうえでは重要なのです。


    正確な総数は出せない

    結論として、フローレス島のコモドドラゴンの正確な生息数は、現在も確認できません。理由は単純に「調査されていないから」ではなく、約13,540km²という大きな島の限られた地域に低密度で分散し、生息域も複数に分かれているためです。さらに、コモドドラゴンがいる場所にカメラを設置しても必ず記録されるわけではなく、撮影された頭数をそのまま個体数として数えることもできません。そのため、カメラトラップ、捕獲調査、個体識別、占有率調査など複数の方法を組み合わせて、それぞれの地域の状態を推定しています。

    コモド国立公園で2,000頭を超える規模の個体数推定が可能なのは、長期間にわたって同じ地域で個体を標識し、再捕獲を繰り返してきた蓄積があるからです。フローレス島では、生息する地域の広さと低い個体密度を考えると、同じ方法を島全体で行うことは簡単ではありません。したがって、「フローレス島には○○頭のコモドドラゴンがいる」と具体的な数字を示している情報があったとしても、その数字がどの地域を対象に、どの調査方法から算出されたものなのかを見る必要があります。現在わかっているのは、フローレス島にも複数のコモドドラゴン個体群が生息しており、それぞれの地域で継続的な調査が行われているということです。島全体の正確な生息数については、今のところ「把握できていません」というのが最も正確な答えになります。



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