MENU

    コモドドラゴンの毒は仲間同士には効かない

    目次

    定説を覆す毒腺の発見

    コモドドラゴン(コモドオオトカゲ)という生き物は、ひと目見ただけで強烈な印象を残す姿と圧倒的な存在感によって、昔から人々の関心を集めてきました。その一方で、その生態については長い間、事実とは異なる理解が広まっていたことも確かです。

    かつては、彼らの口内に存在する多量の細菌こそが最大の武器であり、噛まれた獲物は傷口から侵入した菌によって敗血症を起こし、時間をかけて命を落とすと考えられてきました。コモドドラゴンはその弱っていく獲物を追い続け、最終的に仕留める、という説明が一般的だったのです。



    ところが、研究が大きく進展した2009年、この見方を根本から見直す発見が報告されました。詳しい調査の結果、コモドドラゴンは想像以上に発達した毒腺を備えていることが明らかになったのです。

    獲物に噛みつく際、この毒腺から分泌される毒が深い傷口へと入り込み、体内で作用します。その毒には、血液を固まりにくくする成分や、血管を広げて血圧を急激に下げる成分が含まれていることが確認されています。

    この作用によって、噛まれた獲物は大量の出血を起こし、血が止まりにくい状態に陥ります。さらに血圧の急低下によってショック状態となり、反撃したり逃げたりする力を急速に失っていきます。細菌感染によって数日かけて衰弱するという従来の説明とは異なり、コモドドラゴンは即効性の高い化学的なしくみを用いて獲物を死においやることが分かったのです。

    オーストラリアの系統を物語る毒の性質

    この毒の特徴を詳しく調べていくと、さらに興味深い点が見えてきます。コモドドラゴンの毒は、オーストラリア内陸部に生息する世界屈指の毒蛇であるタイパンの毒と、性質がよく似ていることが指摘されています。

    この共通性は偶然とは考えにくく、生物学的に見れば、コモドドラゴンがオーストラリアを起源とする大型オオトカゲの系統に連なる存在であり、進化の過程で毒という能力を受け継いできた生き残りである可能性を示しています。

    コモドドラゴン同士には効かない

    こうした毒は彼らの捕食行動において重要な役割を果たしていますが、不思議なことに、仲間同士の争いでは決定的な影響を与えません。毎年5月から9月にかけての繁殖期になると、オス同士がメスを巡って激しく争います。この行動はコンバットダンスと呼ばれ、巨大な体をぶつけ合い、時には鋭い歯で噛み合うほど激しいものです。しかし、そのような場面で噛まれたとしても、毒によって致命的な状態に陥ることはありません。彼らの体は、自らが持つ毒に対して耐性を備えていると考えられています。

    そのため、健康で活動的な成体同士が互いを捕食するような共食いは、基本的には起こらないとされています。実際に、元気な成体が別の成体に捕らえられて食べられたという確かな記録は確認されていません。コモドドラゴンは、毒という非常に強力な武器を持ちながらも、同じ種の仲間に対してはそれが致命的にならない仕組みを保ち、厳しい自然環境の中で独自のバランスを保って生きているのです。

    この毒の発見によって、コモドドラゴンは原始的で恐ろしい存在ではなく、高度に進化した捕食者として捉え直されるようになりました。オーストラリアに由来する太古の系譜をその体に宿し、限られた島々で今も頂点捕食者として生き続ける姿は、進化の歴史そのものを感じさせます。

    毒蛇と似た仕組みを持ちながら、仲間同士では無用な争いを避けるかのような振る舞いを見せる点も含めて、コモドドラゴンという生き物は、自然界の奥深さを静かに物語っている存在といえそうです。

    よかったらシェアしてね!
    目次