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    コモドドラゴンはコワい?かわいい?

    コモドドラゴン(コモドオオトカゲ)は「世界最大のトカゲ」「人を襲うことがある危険な生物」という印象が先行しがちですが、実際にじっくり観察すると、その顔つきは意外なほど穏やかです。目はつぶらで、まぶたの動きもゆっくりしており、緊張感よりも落ち着きを感じさせます。口元も常に大きく開いているわけではなく、静かに閉じているときの表情は、どこか眠そうで無防備に見えることもあります。



    生まれも育ちも動物園という、狩りをしなくてもいい東山動物園のタロウは穏やかな顔で、とても狂暴な野生味はありませんが、コモド島やリンチャ島のドラゴンにしても、良い意味でとぼけた顔をしていることも多く、顔を斜に構えて、きょとんとしながら、こちらの表情を伺っている顔などは、愛らしいと言っても良いかもしれません。



    特に印象的なのは、日向でじっとしているときの姿です。体は巨大でも、表情は力が抜けており、のんびりとした空気をまとっています。舌を出していない状態では、鋭さよりも丸みのある顔立ちが目立ち、写真によっては「怖い」というより「ぼんやりしていてかわいい」と感じる人が多いのも自然なことです。
    木陰で顎を地面に預けて完全にリラックスして休んでいる様子などは、まるで大型犬が昼寝をしているような無邪気ささえ漂わせています。



    また、歩いているときの様子も、想像とは異なります。獲物を追う場面を除けば、動きはゆっくりで慎重です。首を少し左右に振りながら進む姿や、立ち止まって周囲を見回す仕草には、野生動物特有の緊迫感よりも、落ち着いた観察者のような印象があります。このときの顔の角度や視線の動きが、結果として表情豊かに見える要因にもなっています。時折、小首をかしげるようにして周囲の音に耳を澄ませる仕草は、非常に知性的で、どこか愛嬌があります。



    さらに、近くで見たときの質感もその印象を左右します。硬質な鱗に覆われてはいますが、鼻先の丸みや首周りのたっぷりとした皮膚のたるみが、全体的に柔らかなシルエットを作り出しています。こうした身体的な特徴が、彼らの動作の緩慢さと組み合わさることで、見る者に威圧感ではなく、包容力に近い安心感を与えます。ただそこに佇んでいるだけで、周囲の時間を止めてしまうような不思議な静寂をまとっているのです。



    日光浴をしている最中に、時折見せる大きなあくびも、その意外な一面を象徴しています。口を大きく開けた瞬間の迫力はもちろんありますが、その後のふっと力を抜いて目を細める一連の流れには、おおげさかもしれませんが、どこか人間味のあるユーモラスな雰囲気が漂います。指先の鋭い爪とは対照的な、その無防備な顔の筋肉の緩みが、観察する側の緊張を解きほぐしてくれるのかもしれません。



    コモドドラゴンが怖い存在として語られる理由は、その生態や能力によるものですが、表情そのものは別の話です。感情を読み取れるわけではありませんが、無表情に近いからこそ、人の側が親しみやすさやかわいらしさを感じ取る余地があります。鱗の重なりが生む目元の曲線や、少し垂れたような目尻のラインが、見る者に優しさを感じさせるのかもしれません。強さと穏やかさが同時に存在している点が、コモドドラゴンの表情の魅力と言えます。



    さらに言えば、水辺で静かに水を飲む姿や、仲間の存在を感じて視線を向ける際の滑らかな頭の動きにも、洗練された美しさと共にある種の柔らかさが宿っています。その一つひとつの所作が、「恐ろしい怪獣」「生ける恐竜」というレッテルを剥がしていき、一つの命としての尊厳と親しみやすさを浮かび上がらせます。



    このように、コモドドラゴンは遠目で見ると迫力があり、近くで顔を見ると意外なほどやさしい印象を受ける生き物です。「コワいか、かわいいか」と問われれば、表情に限って言えば、かわいらしさを感じる人が多いのは不思議ではありません。

    コモド島のツアーでコモドドラゴンを間近に見た人は感じたと思いますが、巨大で特別な存在でありながら、どこか親近感を覚えさせる表情こそが、コモドドラゴンの大きな魅力なのです。

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